Lablog2-8: 外部循環型フォトバイオリアクターを用いた耐塩性微細藻類Dunaliella tertiolectaによるグリセロール生産

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Date: 2022-09-14

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Authors

Naoto Tatebayashi, Yoichi Kumada, Jun-ichi Horiuchi

Speaker

Naoto Tatebayashi

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Questions and answers

・培養条件の検討について、それぞれの条件が良くなったのは何故ですか?
pH
→グリセロールは代謝の過程でDHAPと酸化還元の関係にあります。このDHAPからグリセロールに還元する酵素の至適pHが7.0で活性が最大になると報告されており、このことがpHの検討に大きく影響したのではないかと考えています。

光強度
→一般的に光合成反応では光強度が大きいほど光合成速度が増加する傾向にあります。しかし、菌株ごとにその閾値は異なり、閾値に達したときに光飽和になり、さらに過剰に光供給を行うと光合成速度が低減する光阻害という現象が起きます。本実験では600 μE//m2/sから 800 μE//m2/sに増加したときに菌体増殖およびグリセロール生産が抑制したことから光阻害が生じたと考えたため、600 μE//m2/sが最も効率的な光供給であると判断しました。

NaCl
→本菌株は高塩濃度環境下で浸透圧バランスを調節するためにグリセロール生産を行います。そのため光強度が同じ条件においてNaCl濃度が増加すると、グリセロールを生産するエネルギーの消費が増加するために、菌体増殖が抑制されると考えられます。また、本菌株は増殖連動型のため菌体濃度の増加がグリセロール生産の向上と密接な関係にあります。これらを総合的に考えた結果、NaCl濃度が海水の約3倍である87.6 g/Lの時にグリセロール生産が最も促進されたと考えています。

・培養条件の最適化にあたり、どの条件が最もグリセロール生産の向上に影響を与えていると考えられますか?
→NaClが最もグリセロール生産の向上に影響を与えていると考えています。
理由は菌体あたりのグリセロール生産量 (Specific glycerol production – mg/L/OD680) が最も高い値になるからです。
具体的には光強度の影響は1.4倍程度に対し、NaClの影響は3~4.5倍になります。

・工業化するにあたって、開放系か閉鎖系どちらを考えていますか?
→閉鎖系です。理由として主に光合成反応の律速段階は光供給にあり、開放系で太陽光を用いた光供給では生産性が大きく制限されることから、閉鎖系で人工的に光供給の効率化を図ることが重要と考えています。

・光照射面積をさらに増加させると生産濃度は向上しますか?
→光照射面積についての検討は行えていませんが、今回の実験結果から光照射面積の拡大はグリセロール生産の増加に有効であることが示されたので、更に増大させることで生産性が向上する可能性はあると思います。

・外部循環型フォトバイオリアクターは自身で作製したのですか?
→一から作りました。

・pH-statシステムは自分で作ったのですか?もともと研究室にあったものですか?
→研究室にもともとあったシステムです。

・線速度とグリセロール生産の関係を計算で出すことはできないのか?
→現時点で計算は行えていませんが、今後は様々な線速度で培養しデータを集めることで、ご指摘いただいたような計算を行えればと考えています。

・文献と比較して生産濃度と生産性はどのような位置づけ?
→培養システムがフラスコなどと異なるので一概に比較できませんが、他の文献では約5 g/Lの生産濃度や約380 mg/L/dayなどの生産性が報告されています。

・ランニングコストの計算はどのようになっているか?
→計算は行っていないのでお答えできません。今後の検討材料にさせていただきたいと思います。

・他のグリセロール生産方法と比較して本研究の生産方法の優れたところはどこですか?
→バイオディーゼル燃料生産時の副産物としてや酵母の発酵プロセスなどがあります。これらは植物バイオマスを使用するため、食料問題との競合や土地利用の問題、燃料価格の影響を受けやすいことがあります。さらに発酵プロセスでは植物バイオマスから単糖を得るための工程が多く複雑です、その点、本プロセスでは微細藻類から光合成反応によりワンステップで物質生産を行え、さらに食料問題や土地利用の問題がないこともメリットとしてあります。

・弱い光で沢山グリセロールをつくる菌株は作れないのか?
→その点について調べられていませんので、現時点ではお答えできません。今後の研究の参考にさせていただきたいと思います。